初めての夜
夜になると、泥棒が入ってきたらどうしようと私はおびえた。
断熱材も入っていない、薄いトタン外壁の家。
南側は、吐き出し窓が全面に入っている。
こんな窓、すぐ割れちゃうよな、簡単に入ってこれるよな。
女子供しかいない家だから、ねらわれるかも。
外の音がすごくよく聞こえる。
隣近所に車が帰って来た音に、いちいち、目を覚ます。
防犯用に、誰かが玄関やリビングの窓側に近づいたら電気がつく、センサー付き証明を買わなくちゃ。
そうだ、玄関の外の電気はつけっ放しにしておこうかな。
そんな私の不安をよそに、
太陽も光子もすぐに眠りについた。
父親との別れに悲しむ様子も見せない二人の寝息を聞いて、ホッとしていた。
でも本当は、太陽は離婚は仕方がないと理解して、あきらめているのを知っている。
光子はまだ小さすぎて事態がわかっていないのかも。
光子は、ただ、母親と兄と一緒にいられればそれでいいだけなのかもと思う。
私もわかっているよ。
二人が我慢していることを。
ごめんね。
でも今は、それでも今日1日を終わらせて。
とにかく、今日1日を無事に終えられて、それだけでよかった。
引越し以外のことで、たとえば子供たちが泣きわめいたりして煩わされることがなくて、ホッとしていた。
私だって、ひとりになるんだから気張らなくっちゃと気負っていたので、
それだけで疲れていたのだ。
おたふくかぜ
夜中になると、息子が「ここが痛い」と、頬の後ろを指差して泣き出した。朝になってみてみると、あごがはれていた。
なんと、おたふくかぜだった。
ああ、引越しが終わってから発病してよかった。
引越しの最中に子供が病気で寝ているなんて、心配だもんなあ。
太陽は熱も出ず、食欲が落ちたくらいで、数日ですぐに散歩にも出かけるようになった。
娘も同時におたふくかぜになったが、二人とも症状は軽くて、医者にも行かずにすんだのだった。
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