ひもじかった

本当はひもじかったんだ、私、と気付いた。

落ち込んで、ご飯しかたかない1週間だった。
それが、おいしいものを目の前にしたら、とたんに猛烈な食欲に襲われた。
いや、自分で作らずにすむ食事だったからだと思う。
誰かが作ってくれた料理だったから、おいしかったんだと思う。


金もない、その上、自分でご飯を作るのもいやだった。
そんなときに、多分ご馳走してくれるだろう聡史さんが注文した料理が、私の目の前に運ばれてきた。

私は、バクバクかきこんで食べるひもじさを止められなかった。
お店の人が作ってくれたお料理がおいしくて、おいしくて。

あんなちゃん一家と一緒に外食したことが、
家以外の場所でご飯を食べられるということが、うれしくて、うれしくて。


だって離婚引越ししてから、もう外食はしないと決めていたのだ。
家計を切り詰めるために。

私は外食が大好きだったのに、
毎日朝昼晩、家の中で食べる自分で作った料理の味気なさに、飽き飽きしていた。

そして、自分自身しか料理する人がいないという状況もいやでいやで仕方がなかった。

共倒れがこわかった

でもお金がなくなるのが心配で、食べに行くこともしなかった。
いっそ3人で外食でもしたら、落ち込みから立ち直れたのかもしれない。
でもお金を無駄遣いして、3人で共倒れになるのがこわかった。

1日でも長く生活を続けていくために、
1円でもムダにできない気持ちだった。


ご飯を飲み込むたびに、内臓から力がみなぎるようだった。

予想通り、聡史さんが支払ってくれた。
半分払うよと言うと、あんなちゃんは、
「いいよ、いいよ。お父さんがパチンコでもうけたお金だから」
と笑って言うので、遠慮なくご馳走になることにした。

ありがとう。
お金も払わずに、こんなにおいしいご馳走を母子3人とも腹いっぱい食べることができて、幸せだった。

夕食の支払いまでも

午後は、ダムに遊びに行った。
それから夕方、スーパーで夕食の買い物をした。

ところが、また、あんなちゃんが支払ってくれたのだ。
「お昼、ご馳走になったから、今度は私が払うよ」と言ったが、
「朝、ご飯作ってもらったから」と言って、私からお金を受け取ろうとしなかった。


ありがたかった。
母子家庭になったばかりの、私の家計を心配してくれたのだと思う。
でも、私たち母子3人の夕食の分までお金を払ってもらえることに驚いた。
友達同士でも、なかなか、相手の分まで支払うということはしないからだ。

お金を払わずにすみ、しかも豪華な夕食を、自宅で一緒に食べることができてありがたかった。





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